「小さな親切」作文コンクール 入賞作品 入選

「本当の親切とは…」

埼玉県  正善小学校  3年  天野 耀優

 ぼくには親友がいる。名前はカーン君。4月に日本に来たばかりのクラスメートだ。

 帰りのしたくが終わり、後ろの席の友だちといっしょに本を読んでいたときのことだった。とつぜん、カーン君がぼくに、

 「天野さん、友だち、ノー。」
と強い口調で言ってきた。ぼくはなにもしていないのに。困っているときに助けてあげているのに。いろいろ教えてあげているのに。なんだよ、とつぜん。

 帰り道、後ろからカーン君が追いかけてきて、ぼくの手をつかんだ。いかりのおさまらないぼくは、その手をふりはらい、カーン君に負けないくらいの強い口調で、

 「友だち、ノー。」
と言って、走って家まで帰った。走りながら、ぼくは涙がなぜか止まらなかった。

 泣きながら帰ったぼくの話を聞いた母は、

 「カーン君、不安なのかもね。もし耀が、とつぜん言葉も習かんもまったくちがう国の学校に通うことになったら、すごく不安じゃない?」

と言った。ぼくは、ハッとした。もし、学校でみんなが話していることがわからなかったら……。不安で、学校に行くことがこわくなってしまうだろう。

 ぼくはあのとき、カーン君の状況や気持ちを考えなかった。ただ、言われた言葉にはらを立てて、わけも聞かずに仕返しをしてしまった。休み時間になると、ぼくのとなりに来るカーン君。ぼくのことを「友だち」と言ったカーン君。もしかしたら、カーン君はぼくといっしょにいることで、ほんの少しホッとできていたのかな。そう思うと、また涙が出た。

 ぼくは今まで、自分はカーン君に親切にしてあげていると思っていた。でも、本当の親切は、自分のやさしさをおしつけることではないと気づいた。相手の状況や、気持ちをりかいしてせっすること。ひつようなときに、スッと手をさしのべること。しぜんな親切こそが、本当の親切なのだと気づいた。

 ぼくはびんせんを取り出し、カーン君に手紙を書いた。

 『カーン君、昨日はごめんね。カーン君が夏休みにパキスタンに帰ってしまうのが、悲しいです。カーン君は、ぼくの一番の友だちです』

「友だち」だけは、ちょっとだけべん強したウルドゥー語で書いた。

 次の日、ぼくはふうとうをにぎりしめて、学校に向かった。カーン君は、ぼくがほかの友だちと仲良く話しているのを見てうらやましくなり、あんな言葉を言ってしまったらしい。てれくさそうにあやまり、手紙をもらってうれしそうにしているカーン君を見て、なんだか心がくすぐったくなった。カーン君は、ぼくに本当の親切を教えてくれた先生だ。

 真夏の青い空の中を、ひこうきがとんでいる。この青い空は、カーン君のいるパキスタンに続いている。今年はいつもより、9月になるのが楽しみだ。親友のカーン君に会えるから。

審査員コメント

カーン君の言ったのは「you know?」だったかもしれません。それなら「友達だよね?」という意味になります。
それはともかく日本人同士でも気持ちのすれ違いが起きます。天野君がえらいのは、そんな時でも相手の立場を考えて行動ができたことです。
すれ違いを作るのも自分、修復できるのも自分。天野君とカーン君にあらためて教わった気がしました。

みんなはどんな作文を書いているのかな?
~平成28年度  「小さな親切」作文の傾向~

グラフは、作文のテーマ「『小さな親切』~私のした、うけた、みた、できなかった親切」の内訳です。
自分が“実行した”親切について描いているものが最も多く、小中学生とも約半数となっています。

「親切をした:小学生46.2%、中学生49.2%」に対して、二番目に割合が多い「親切をうけた:小学生36.9%、中学生30.8%」

作文の内容で一番多かったものは、おじいさんやおばあさんなど家族を含めた「お年寄りとの関わりや交流」について書いたものです。

それ以外では、「学校やみんなが使う場所のそうじ」「身の回りの整理整とんの大切さ」「体の不自由な方との関わり」「家族の間の思いやり」「バスや電車での席ゆずり」などを書いたものが目立ちました。また、最近各地で自然災害がおきていますが、「災害がおきたときの助け合いやボランティア活動」などをテーマにしたものもありました。
『小さな親切』というテーマは同じででも、内容はさまざまなものがあります。

  • お年寄りの荷物を持ってあげた
  • みんなが使う場所のスリッパや靴をそろえてあげた
  • おうちのお手伝いをした
  • ごみ拾いをしたり、クリーン活動に参加した

“親切を実行した”内容ではなくても、親切にされてうれしい気もち、できなかったときのくやしかった気もちを書いた作文もあります。
自分が体験して感じたことは、素直に表現して書いてみましょう。きっと読んだ人が共感して、感動してくれるでしょう。

  • お年寄りや、妊婦さんに席を譲りたかったけどできなかった…
  • 落ちこんでいるときに、やさしい言葉をかけてもらってうれしかった
  • 友達がそっせんして困っている人を助けているのをみた

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第42回(平成29年度)入賞・入選者【PDF】
第41回(平成28年度)入賞・入選者【PDF】
第40回(平成27年度)入賞・入選者【PDF】

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