この夏、息子にせがまれて昆虫採集に行った。始めての経験で、目的のカブトムシがいる木すら見当もつかず困り果てていたら、数人の少年、少女と出くわした。茶髪に、タバコ、ルーズなファッション。見た目はやんちゃな彼らだが、私と8歳、3歳の息子の困り果てた様子を見て、快く虫捕りのメンバーに加わってくれた。
セミの幼虫が土から出て木を登っていく姿。今、まさに脱皮する瞬間。脱皮したばかりの白いセミ。昆虫たちの樹液レストラン。息子たちは目を輝かせて命の尊さを見、聞き、感じているようだった。
危険な遊びをしている人には「子どもがいるから」と注意をしに行き、真剣に守ってくれた。「喉が渇い た」と言う息子に、笑顔でペットボトルを差し出す。横着でわがまま盛りの息子たちに常に優しく接してくれた。
彼らが捕ってくれたカブトムシ「テルヒコ」は息子の宝物だ。カブトムシにしてはおかしなその名前は、それを捕ってくれた少年の名なのだ。
命の神秘や尊さ。勇気ある行動で弱い者を守る強さ。素敵な夏の思い出。そして、親切や優しさという何よりも大切なものの温かさ。私たちは、子どもにそれらを言葉で教えようとしがちであるが、彼らは温かいふれあいの中で息子たちにそれを教えてくれた。
一般的な言い方をすれば、彼らは世間で「良い子」と言われる類には入らないのかもしれない。けれど、彼らの優しさは本物だと私は思うし、心から感謝している。
(河出書房新社刊『胸が熱くなるいい話』より)
