第2章 語り継ぐことの重要性
親も教師も、全ての大人が語り継ぐ意識が大切。

前述の田畑ヨシさんの紙芝居「つなみ」では、冒頭におじいさんが登場します。
このおじいさんは、囲炉裏のそばでいつも、明治29年の津波の体験を語っています。この津波で、おじいさんはひとりぼっちになったのでした。

「いつかきっと、津波が来るのだから、大きな地震がゆった(起きた)なら一人でも裏の赤沼山に逃げるんだよ」とおじいさんは話します。
ある日、ついに恐れていた地震がやってきます。おじいさんの繰り返しの語りが染みついていたので、赤沼山に逃げたヨシさんは無事でした。
ただ、文中にはありませんが、お母さんだけは亡くなりました。一度避難したものの食料を取りに自宅に戻り、その時に津波とともにやってきた強風にあおられたトタンがお母さんの足に当たったのだそうです。

紙芝居「つなみ」は山崎教授の監修で書籍化されている

今、都会では核家族が多く、このおじいさんのような存在は少ないかもしれません。となれば、誰かが語る必要があるでしょう。
幸い、体験者たちの作品が多く残されていますので活用しない手はありません。今、この記事を読んだ方もどうか気に留めていただき、さまざまな機会をとらえて、子どもたちに伝えてあげて欲しいと思います。

紙芝居「つなみのひ」と「まつりのひ」もご活用ください

「小さな親切」運動本部では、東日本大震災の年に現地の被災者や学校を訪れ、被災体験を聞きました。
それもとに構成した「つなみのひ」と、数年後の同じ世界を描いた「まつりのひ」の2つの紙芝居を作成しました。

登場するキャラクターを動物にして表現を和らげていますが、小学校での上演では、津波の怖さとその時に必要な心構えなどについて、子どもたちの理解度がたいへん高いことに驚かされました。
また、担任の先生からは、「児童がこんなに集中力を見せて、積極的に発言するのを初めてみました」というご意見もいただいています。
防災の他、郷土愛や友情などもテーマになっていて、道徳の授業でも使用できる内容です。

こちらは無料でご利用いただけますので(送料のみ負担)、ご入用の方は、「小さな親切」運動本部までご連絡ください。

「つなみのひ」(左)では災害を通じて助け合いの大切さなどを学ぶ
「まつりのひ」(右)ではお祭りを通して復興に向かう様子を描く
詳しい内容は下記から見ることができる
http://www.kindness.jp/kids/

田老の中学生が書いた『いのち』

岩手大学地域防災研究センターが発行した『いのち』は、宮古市立田老第一中学校の生徒たち130人が綴った津波体験作文集です。
当時の校長である佐々木力也先生は、その前書きで作文を生徒に書かせる時の葛藤をこのように述べられています。

「表現活動を展開する時、生徒の心の有り様に配慮しなければならない。(中略) 荒谷アイさんがおっしゃる通り、いつか誰かの役に立つと思う」

震災から1年後に書かれたのは、津波の際の恐怖や混乱、荒れ果てた町を見たときの茫然とした様、亡くなった身内への哀悼から、また学校へ通えることになった喜びや、ボランティアの人たちとの交流や感謝の気持ちなど多岐にわたっています。
共通するのは、生きようとする力強さと故郷への思いです。

中学生の教材としてこれ以上のものはないかもしれません。こちらは、岩手大学地域防災センターのホームページ(http://rcrdm.iwate-u.ac.jp/download/)からダウンロードすることができます。

生徒が書いた作文だけでなく、当時の様子を撮影した記録写真(撮影:佐々木力也校長)もおさめられている

あらゆる教科で防災はテーマにできる

「総合」の時間が防災に割り当てられやすいと書きましたが、「実際には、あらゆる教科の先生が防災や災害をテーマに取り入れることが望ましいです」と山崎友子教授は指摘されました。
算数、英語、音楽や図工、家庭科、さまざまな角度から災害や防災にふれることで、理解は深まります。家庭科なら炊き出しメニューや緊急持ち出し袋の作成、社会科で町の地図作りを、図工で立体模型作りなどもできます。味覚や聴覚など受ける刺激も異なりますので、記憶にも残りやすくなるわけです。

山崎教授は、「先生にはクリエイティブさが求められますが、どうやったら子どもたちに伝わるかをいつも考えていただきたい」と願っています。