【2時間目】ヒントを上手く使って、引き出そう

何をやっても自由!ブリコラージュで応用力を育てよう!

少し専門的な話。僕は保育士になりたいという若者たちを教えています。
その中で、ブリコラージュという言葉を使うことがあります。対応する適切な日本語がないのだけど、“今そこにある素材や道具で何とかやりくりをして物を作る”という感じの意味でしょうか。
計画や設計とは反対の言葉で、用意周到といったエンジニアリングとは対照的な言葉です。その時その場にある有り合わせの材料を活用するわけですから、創造力と感性を重視する作り方ということになります。

例えば、市販のプラモデル。これは設計図があって、完成形もわかっていて、全ての部品が揃っている。あとは組み立てるだけですね。もちろんプラモデルの組み立てにも面白さはあるでしょうが、創造力を養うとは言い難いです。

それとは反対に、手元に紙パックと糊しかないとして、「さあ、これで何を創ろう。どうやって遊ぼう」と思ったら、そこには相当の想像力と創造力が必要になります。何ができるかわからない状態。

最初は、トラックを作り始めたとしますね。でも作っていく段階で、どうもうまくいかない。そのうちに、『これはロボットにした方がいいかも』とひらめいたりするんです。ここが面白いところ。

設計図は無いので、何を作っても自由!

だから、諦めない気持ちや、応用力が身につくのです。そして、これがブリコラージュの魅力です。
プラモデルだったら、部品が一つないだけで、作る気がなくなるでしょ。

今、上司の指示がなければ動けない若者が増えている、と聞きます。マニュアル人間という言葉もありますね。自分で考えず、創意工夫をしようとしないということだと思いますが、それは幼少期に体験すべきだったことが抜け落ちているんですよ。

答えは押し付けず、ヒントで引き出そう

だから、僕が子どもたちに体験して欲しいのは、まさにブリコラージュです。全ての材料や用具を揃えて行うだけでなく、時には何か欠けている、足りない環境の中で工夫してみてほしいのです。
ブリコラージュをする人をブリコルールと言いますが、教えている学生たちにも「君たち自身がブリコルールでなければいけないよ」と言っています。

技術を教えるのではなく、子どもたちの想像力や、創造力を伸ばすための指導です。もっといえば人間力。指導というよりもサポートやガイドでしょうか。
お父さまやお母さまも、“教える”のではなく、“考えさせる”“工夫させる”ようなガイドをお願いしたい。ぜひともブリコルールになっていただきたいと思います。

ブリコルールに必要なことは、自分が楽しむことです。親が何かを楽しんでやっていたら、子どもは必ず興味を持ちます。自分もやってみたいと思うでしょう。

ガイドは答えを教えるのではなく、ヒントを与えるのです。例えば、同じ花、同じおうちばかり描く子がいたとします。実際、ものすごく多いです。お花といえばチューリップ、おうちといえば三角屋根……つまり概念型ですが、これはある意味、自分の発想を停止しているんですね。

そんなときには、ヒントを出しましょう。
「チューリップの上に蝶々が舞ってるよ」「チューリップ、空にも飛ばしてよ!」とか「屋根の上に猫ちゃんがいるよ」「煙突から出る煙が雲になってくよ!」「きれいな服だねえ。でも春だから、もう少しあたたかそうな服を着せてあげてもいいよね」
そんな風に話をすればいい。そこで子どもは子どもなりに考えます。これが大切なプロセスです。

「あ、雪が降ってきたね。それなら、あれが欲しいなぁ。雪で作るあれ。なんだっけ?」
こういうお願い型のヒントもあります。
お願いされるとそれに答えたいという気持ちがあるのですね。本来は豊かな想像性や自由な発想を引き出しましょう。きっと、たくさんの雪だるまが描き加えられるでしょう。空にも、海にも。

小さな絵ばかり描く子がいたら、ちぎり絵(貼り絵)で遊んでみるといい。紙は細いものだとちぎりにくいですから、大きく表現するようになります。全ては否定せずに導くことが大事です。概念型の絵を見ても心配せずに、あくまで楽しさの中でやさしく温かくガイドすることが大切なのです。