【第3回】体験こそが、子どもの成長を促す栄養素。

時間と思い出、共有すると親子の絆は深まっていきます。

熊本県のある幼稚園でのことでした。お買い物遊びをしていた女の子が、折紙をお肉に見立てて持ってきました。一枚は茶色で、もう一枚はピンクです。
「どっちもお肉なの?」と私が聞くと、その子は「うん。焼く前はピンクで焼くと茶色になるの」と答えました。それを聞いて私は熊本まで来た甲斐があったと思いました。

何故かと言いますと、最近の幼児はまな板を見たことがない子も多いからなのです。おままごとを見ていても、いきなり「チーン。できました」と、かなりお手軽な状況になっています。電子レンジ以外で、親が料理をしているのを見たことがないわけですね。

子どもは驚くほど親の行動を見ています。そして記憶します。それは生きていく術を学ぶことなのですから、本能的なものなのでしょう。ですから、私は子どもを見るだけで、家庭や親御さんの様子がわかってしまいます。まさに、子は親の鏡ですね。

もちろん、時間に追われる毎日で料理をできないお母さんもいるでしょう。でも子どもには、なるべく多くの体験をさせて欲しいのです。毎日とは言いません。週に1回でも、いっしょに買い物に出かけて、いろいろなものを見せてあげてください。料理もいっしょに作ってみてください。

お母さんと料理を作ったとなれば、リアルなおままごと体験ですからインパクトは強烈です。どこで何を買って、どんなものをどんな風に作ったのか、2年くらいははっきりと覚えています。特に幼稚園にあがる前の子は、他からの情報が少ないので、吸収力はものすごいですよ。

『お肉は焼くと色が変わる』
大人にとっては当たり前ですが、子どもには大発見です。できた料理を見たのではなく、できる過程(プロセス)を見たからこその興味であり、知識なのです。いろいろなことを知っている子は、間違いなくそれだけの体験をしています。体験するということは、成長のための貴重な栄養なのです。

ですから、料理や買い物に関わらず、時間が許す時はいっしょに外出することをお勧めします。散歩をするだけでも、屋外にはたくさんの情報と刺激があります。スマホはその時こそ本当の出番。鳥や花の名前などを子どもといっしょに学べばいいでしょう。たぶん、次回、その花の名前は、お母さんがお子さんに教わることになるでしょうね。そう、子どもと同じ目線で世界を見て、そこから多くを学べることも親になった恩恵ですから、それも楽しんでいただきたいと思います。

こういう時間を過ごし、思い出を共有することで、親子の絆は深まっていきます。自分が大切にされていることも子どもは体感できます。そして、知識を得ることの楽しさを覚えますので、勉強嫌いにもなりません。
後々「勉強しなさい」なんて、言わなくても済むわけですね。