親切コラム ご長寿からの贈り物
長生きの秘訣は、「腹七分目」と「怒らないこと」

吉井 正雄さん  【 前編 】

香川県まんのう町の田園風景
香川県まんのう町の田園風景

香川県まんのう町(ちょう)にお住いの吉井正雄さんは、大正6年生まれ。99歳(2016年現在)ですから白寿になります。これまで、「小さな親切」運動には実行章のご推薦を数多くいただいた他、たくさんのご提言をくださっています。

今なおご自身の歯で食事されていますし、記憶力も会話力も抜群です。そんな吉井さんからの貴重なアドバイスをいただいてきました。

 

長生きの秘訣は、「腹七分目」と「怒らないこと」

—-長寿の秘訣があれば教えてください。

「腹八分目っていうでしょう。でもね。八分目でもまだ多いです。七分目くらいがちょうどいい」と吉井さん。

実際にその方法を見せてくれました。

②吉井さん コーヒースプーン

「だいたい私の場合は、小さなご飯茶碗に半分くらいです。それをコーヒースプーンでご飯を少しずつすくって食べるんです。口に入れたらゆっくりとよく噛む」

そうやって、30分ほどかけて食事をされるのだそうです。それで十分に満腹感が得られるとか。高齢者になると嚥下機能も弱まりますが、ゆっくりと食べることで障害もないそうです。

ということで、長生きの秘訣その1は「腹七分目」でした。

 

—他には何かありますか。

「怒らないことです」

怒ったところで、自分はちっとも楽しくないし、周りにも迷惑な話ということです。怒りからは前向きで、建設的なことは生まれません。かえって体調や人間関係を崩すだけです。

誰かにむっとなったとしても、相手の状況や心情まで配慮すれば、怒りのほとんどは収まってしまうというお話でした。

そういう吉井さんも昔から達観していたわけではありません。

現役時代、吉井さんは中学校教師でした。校長の仕事も体験されていますが、先日招かれた同窓会でのことです。教え子の一人が言いました。

「先生はよく怒っていましたよね」

それを聞いて、吉井さんは苦笑しながらも、それからの経験が自分を育ててくれたことに感謝したそうです。

「『小さな親切』運動をしていく中で、学べたのだと思います。引退後には仏門にも入りましたが、大自然の流れ、意思の中で自分は生かされているんだということ、そしてまた数多くの方々のおかげで生きていられるんだということ。それを理解することができました。

そして、多くの人に感謝し、感謝されたことで、心は平安でいられ、長生きができているんだと思います」

 

—長生きをされて、よかったと思うことは何ですか。

「人生は80歳過ぎてからが面白いんですよ。それを体験しないと映画のクライマックスを見逃すのと同じです」

白寿の大先輩の、実感がこもったこの一言。これは私たちも長生きしないわけにはいきません。

腹七分目と「怒らない」を実践して、人生のクライマックスを見届けましょう。