60周年特別インタビュー第2回:企画の原点は“人を思いやる心” 小山薫堂(放送作家・脚本家)

放送作家・脚本家として、数々のヒット作品を世に出している小山薫堂さんは、故郷・熊本県の地方創生の企画で大人気キャラクター「くまモン」を発案するなど、企画やプロデュースなどの分野でもご活躍です。

小山さんがパーソナリティーをつとめるラジオ番組『日本郵便SUNDAY‘S POST』 (TOKYO FM)に、「小さな親切」運動本部の小林和明副代表がお手紙を書いたことがきっかけで、親切運動に興味を持ってくださった小山さん。今回は小山さんの多彩なアイデアの原点にある、人を思いやる心についてお話をお聞きしました。

 

 

「小さな」にやどる愛

 

昭和39(1964)年の東京オリンピックを機に、「小さな親切」運動が全国に広がった話をお聞きして、僕は東京オリンピックのレガシーは、高速道路や大規模なホテルなどインフラ系ばかりだと思っていたので、親切運動のような心を育てる活動が生まれ、そしてそれが今も続いていることにとても感動しました。

「小さな」というのがいいですよね。それぞれの気づきというか、ささやかなことが雪だるま式に大きくなって、幸福を生むこともあります。「小さな」という言葉に、僕はとても共感します。

親切もそうですが、誰かの役に立つことで幸福を感じるのは、人間だけです。僕の会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」の社是は、『世の利をつくる愛でありたい』。この言葉は、実をいうと他社に依頼され考えたものですが、残念ながら不採用となりました。大変気に入っていたので、自分の会社の社是にしました。

「愛」は、人が本能的に持っている、誰かを想う気持ちだと思うのです。社員にも、「その仕事は誰を幸せにするのか」を考えなさい、といつも言っています。

僕はこれまでいろいろな企画に携わりましたが、アイデアを生み出す原動力となっているのは「誰かを喜ばせたい」という気持ちです。芸術家のように、何かを表現したいというよりは、ドラマや情報番組の制作、本を書くこと、地方創生の仕事などを通じて、誰かをハッピーにしたい、その気持ちしかありません。

「企画やサプライズの原点はバースデープレゼント」ともよく言うのですが、例えば両親など、初めて誰かにプレゼントをするとき、「何を贈ろうか、何をあげたら喜んでくれるのか」と一生懸命考えますよね。それが、企画の第一歩です。相手を想う気持ちをいつも大事にしたいと思っています。

 

タクシー運転手は“土地の顔”

 

今も心に残る親切は、熊本のタクシー運転手さんです。運転手さんは女性で、行き先を告げて走り出しましたが、なかなか料金メーターのスイッチを押しません。「メーターを入れるのを忘れていますよ」と声をかけると、「わかっていますよ」と微笑みました。

「この先の信号の待ち時間が長いので、待っている間にメーターの料金が上がり、お客様がイライラしないように」とのこと。あえて入れていなかったと知り、感動しました。

タクシー運転手さんの流儀として、マニュアル車の場合ですが、2速まではメーターのスイッチを入れない方が多い、という話を聞いたことがありますが、名古屋でも似たような経験をしました。

初めて訪れた土地で、一番最初に出会うのがタクシー運転手さんという場合は多いですよね。その方が親切だと、その土地の印象が良くなります。車の運転には、その土地の心が表れやすい。成田や羽田のタクシー運転手さんが親切だったら、海外から来た人に日本はすばらしい国だと印象づけることができるかもしれません。

 

運転は「親切スイッチ」ONに

 

車の運転といえば、平成19(2007)年に、首都高速道路(首都高)から依頼されて、交通事故を減らすためのプロジェクト「TOKYO SMART DRIVER」を始めました。首都高の事故原因で一番多かったのは、意外なことにスピードの出し過ぎによるものでなく、料金所付近、合流地点などでドライバーが譲り合いをしないために起こることがわかりました。そこで、もっと思いやりを持って優しい気持ちで運転しよう、と呼びかけたのです。

企画の旗振り役として、もちろん僕も優しい運転を心がけました。それまでは、結構荒っぽい運転をしていたのですが、首都高に乗ったら「親切スイッチ」を入れるように(笑)。すると、会社でなにか嫌なことがあっても、首都高に乗ると優しい人になる。だんだん、ほかのドライバーに道を譲ってあげることが喜びになりました。

高速道路は普通、早く目的地に着くために乗るものですよね。だから、渋滞しているとイライラしてしまう。でも、僕は「親切な心を増やすために乗る」と考えるようにしました。道路は移動するためのものではなく、「自分の心を優しくする場所」と価値観を変えたのです。それからは、優しい気持ちで運転ができるようになりました。

このプロジェクトは多くの人が賛同してくださり、東京以外の地域にも広がりました。今はNPO法人を立ち上げて、「JAPAN SMART DRIVER」として活動しています。

 

くまモンは「しあわせ部長」

 

「くまモン」は、熊本県の「営業部長」として有名ですが、「しあわせ部長」の肩書もあって、親切運動にはぴったりのキャラクターです。

僕は以前、“くまモンに「小さな幸せ」を報告するアプリ”をつくったことがあります。「今日は朝起きたら晴れていて、洗濯物が乾きやすくて嬉しい」「駅に着いたら、ちょうど電車が来た」「レシートの合計金額が777円だった」とか、ちょっとしたラッキーやハッピーな出来事を投稿すると、くまモンが食べるミルフィーユがどんどん積みあがっていく。「プチハッピーのミルフィーユ」です(笑)。

小さな幸せを共有することで、投稿を見た人がほのぼのとした気持ちになって、みんなが幸せを感じられたらいいなと思ってつくりました。「小さな親切」も、みんなが報告し合って、共有できる仕組みがあったらすてきですよね。

親切運動は、未来永劫続いていく活動であってほしいです。コロナ禍で、親切の形も多少変わったように、時代ごとに親切の形は変わっていくと思います。江戸時代の親切と今とは、全然違うかもしれない。当然、中には変わらないものもあります。

この運動が何百年も続いていったときに、いつか「親切を通して時代が見えてきた」など、そういうものをこの先、発表していったらおもしろいのではないでしょうか。

コロナ化で苦境に立つ人々などをラジオ番組を通じて応援。2022年5月25日、小山さんが社長をつとめる「N35インターナショナル(株)」へ「小さな親切」実行章を贈呈しました。

 

 

 

 

 

 

 

【プロフィール】

小山薫堂(こやま・くんどう)

1964年、熊本県天草市生まれ。日本大学藝術学部卒/放送作家/脚本家/(株)オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長 / N35インターナショナル(株)代表取締役社長/(株)下鴨茶寮代表取締役社長/京都芸術大学副学長。映画「おくりびと」では脚本を担当し、第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、 第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞。また、熊本県の地方創生の企画に携わり、「くまモン」の生みの親としても知られる。

 


 

思いやりの心で交通事故を削減 「JAPAN SMART DRIVER」

 

小山さんのインタビューに登場する、交通安全プロジェクト「SMART DRIVER」。平成29(2017)年に「NPO法人日本スマートドライバー機構」が発足し、現在は「JAPAN SMART DRIVER」として全国に活動の幅を広げています。

「思いやりを増やす。交通事故を減らす。」をスローガンに、主な事故原因である割り込みなど周囲への不注意を減らすため、ドライバー一人ひとりに思いやりのある運転を呼びかけています。また、運転マナーの悪いドライバーを取り締まるのではなく、良い運転をするドライバーを「ホメる」ことで運転マナーの向上に貢献。

なんだか、「親切さんの表彰(=ホメる)」によって、親切さんを増やすことを目指す親切運動に似ていますね。「JAPAN SMART DRIVER」の活動を一部、ご紹介します。

●良い運転をホメる『ホメパト』

日本でたった1台のホメるパトカー『ホメパト』。ピンクをベースカラーにカラーリングされたホメパトは、主に交通安全のイベントなどに出動して安全運転を呼びかけています。これまで何台ものホメパトが活動しており、今年は7代目が登場。イベントなどで見かけたら、ぜひ声をかけてみてくださいね。

 

 

●あなたも「SMART DRIVER」に

「SMART DRIVER」のシンボルマークは、ピンクのチェッカーフラッグ。チェッカーフラッグといえば、 F1などで使われるゴールサインですが、一般のドライバーにとってのゴールは「安全に目的地に辿り着くこと」との意味が込められています。

「SMART DRIVER」のHPでは、公式ステッカーを販売中。あなたも、このステッカーを車やヘルメットに貼って、思いやりのある運転を心がけてみませんか?

 

 

<JAPAN SMART DRIVER>

【問い合わせ】

代表メール:contact@smartdriver.jp

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公式HP:https://www.smartdriver.jp/

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