2020年12月3日 荒川区立第四峡田小学校

同じ教材で異なる授業方法を実践

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、心配していた授業実施でしたが、今年度も無事に行うことができました。今回うかがったのは、東京都・荒川区立第四峡田(だいしはけた)小学校。講師には馬場喜久雄(ばば・きくお)先生をむかえ、4年生の2クラスを対象に授業を実施しました。紙芝居『まつりのひ』を教材にそれぞれ異なる授業方法で「郷土愛」について考えてもらいました。


『まつりのひ』は、大津波に襲われてしまった村が数年をかけて少しずつ復興し、ようやく村祭りが開催できるようになり、その祭りの日までの村の様子を描いています。出し物が決まらず困るコタロー、津波の怖い記憶が消えないポンタ、変身が苦手なキュウスケの3人を中心に、物語が進んでいきます。

まず授業を行ったのは、4年1組。紙芝居を読んだ後、「心に残った場面はどこかな?」と子どもたちに問いかけると、主人公のコタローが転校生のキュウスケに優しく接している場面や、最後にお祭りが大成功した場面など、それぞれの印象的な場面を挙げてくれました。

みんな積極的に発言してくれました

話しかけるコタロー

不安そうなキュウスケに話しかけたコタローは優しい、という声も

その場面を選んだ理由を聞くと、出てきたキーワードは「優しい」「仲がいい」「みんなのため」。誰かのために行動する主人公たちの気持ちが印象に残ったようです。最後に発表してもらった、自分たちが「住んでいる町のためにしていること」からは、生き物を守る、自然を大切にするなど、今の環境を守りたい気持ちが伝わってきました。

印象に残った場面絵を時系列に並べて、その下に選んだ理由書きます

次に授業を行った4年2組では、紙芝居の朗読の後、特定の場面について、「このときのコタローはどんな気持ちかな?」と投げかけながら進めました。ポイントは漁師のおじさんが登場する場面。村祭りの出し物を聞かれときのコタローの気持ちを想像し、みんなで掘り下げていきます。

「コタロー、村祭りの出し物は決まったかい?」

コタローは、村祭りに出たいのか、出るのをやめたいのか、……色の異なるカラーカードを使って自分たちの考えを表現し、他の考えのクラスメイトと意見を交わします。発言することが苦手な子どもでも、カードを出すだけで意思表示ができるので、全員で一緒に授業を進めている空気ができていました。

机の上に置かれたカラーカード。君はなぜその意見?

青はやろう!、黄はどうしたいいか迷う、赤はやめたい、と色で意見を分類します

この授業は、「自分の町のいいところ」を聞くところから始まります。子どもたちから見る地域の姿を知ることができるだけでなく、授業が終わる頃には子どもたちに、「実は町のためにやっていることがあった!」「今はやっていないけどこれからやりたい」と前向きな心の変化が生まれていました。こうした気づきが、郷土を大切にする第一歩になるのかもしれません。


実施概要
主催:公益社団法人「小さな親切」運動本部
補助団体:公益財団法人 JKA
講師:馬場喜久雄(全国小学校道徳教育研究会 顧問)
参加協力:荒川区立第四峡田小学校
日時:令和2年12月3日(木)